キューバの歴史―キューバ中学校歴史教科書 先史時代から現代まで― (世界の教科書シリーズ28)
世界の教科書シリーズ28ということで、キューバの中学校の歴史の教科書が邦訳されました。
まずその事実がすごい(笑)。
日本人はなんて物好きなんだろう。。というのはまあ冗談としても。
値段がちょっと高いので、よっぽどキューバを勉強している人を対象に作られたのかなとも思いましたが、読んでみるとそうでもない。もとが中学生向けの教科書というのもあって、とってもわかりやすく、キューバの歴史が勉強できます。
やっぱり日本人の興味関心でいうと、革命以後というか、1953年のモンカダ兵営襲撃事件前後あたりから後の時代がメインになると思うんですよね。フィデルやチェが出てきてからのことは、本もいっぱいあるし、大体わかる。でもこの本では、それは全体のうちの最後の4分の1ぐらい。それ以前の先住民の時代からスペイン人によるキューバ発見、植民地時代〜独立戦争〜アメリカの占領〜革命以前が4分の3を占めます。なので、キューバの歴史全体を見渡すには最適の本だと思います。
なるほど、こんな歴史があって、その結果としてああいう革命があったのだなと。
あたり前のようですが、日本とは全然違う。
まがいなりにも1400年ぐらい続いていて、平安時代なんて貴族の繁栄の時代があったり、200年も鎖国してみたりする国(もちろん、そんなことばかりじゃないけれども)とは全然違う。なんというか、ものの考え方の問題で言えば、そういうことに付随するような発想、アイデアは1ミリもないのかもしれないと思ってしまいます。
500年前にコロンブスに発見されてから、先住民は絶滅し、アフリカから奴隷が連れて来られ、ひたすら被支配の歴史を歩んで来た。というか、この教科書を読む限り、被支配と反抗がその歴史のほとんどのように見える。そういう国が世界にはあるんだなと、改めて思いました。
あと、やっぱり教科書ということで、一党独裁の国家ですから、国家の姿勢や方針みたいなものが色濃くあらわれているわけですが、一貫して「人民」「民衆」にとって個々の歴史的事実がどういうことだったのか、ということに主眼が置かれているのが興味深かったです。日本の歴史の教科書だったら、どうしても支配者層側からの記述になる。どういう勢力とどういう勢力が闘って、どっちが政権取りました、みたいな。例えば豊臣家が滅亡して徳川家が天下を取ったという時、それについての日本の教科書の記述には、一般の民衆みたいなものの顔が全く見えてこない。実際、大多数の日本人にはそれほど影響がなかったのかもしれない。でも革命以前のキューバの歴史は、ほとんど圧政者VS人民という形で語られていて、その歴史を語る上でのそもそもの構造の違いみたいなものが、とっても勉強になりました。そしてなにより、キューバ政府がどういうふうに国民を教育したいと思っているのか、ちょっと伺い知ることができました。そういう意味での教科書問題というのはなかなか難しいので、ここでは書きませんが。。
それにしても、他国の教科書を母国語で読めるって面白いですね。
ちょっとリアル・キューバを覗き見した気分。
内容紹介
キューバの9年生(中学3年生)のためのキューバ史の教科書であり、原始共同体時代から1970年代までを扱う。キューバ革命のみを重視することのない通史であり、キューバ人が自国の歴史をどのようにとらえているのかを知ることができる貴重な1冊。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
後藤 政子
神奈川大学教授。ラテンアメリカ現代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Amazon.co.jpより


